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カレーと漢方

カレーと漢方
カレーの原料となっているスパイスは、薬味とも言われるように、インドにおける伝統医学でアーユルヴェーダで用いられる薬物が主体となっています。これらの薬物はヨーロッパや中国にも伝えられ、それぞれの国で同様の薬効を期待して用いられてきました。
またヨーロッパやアラビアなどの香辛料が逆にインドに移入され用いられたものもあります。今日日本において漢方医学の再認識が叫ばれ、漢薬の名も一般化してきましたが、カレーの主原料であるウコンや、香辛料として調合されるショウウイキョウ、ニクズク、チョウジなど漢方の胃腸薬として欠くことのできないものもあり、中国文化とインド文化の接触から生まれたものと言えるでしょう。インドのアーユルヴェーダは仏教の伝播と共に中国に伝わり、そこで用いられる薬物は、唐代の新しい薬物として本草書に収載され、日本には遣唐使らにより伝来され、正倉院にも収められています。

五味:辛(しん)、苦(く)、甘(かん)、鹹(かん:塩からい)、酸(さん)
五性:「寒(かん)」「涼(りょう)」「平(へい)」「温(おん)」「熱(ねつ)」
帰経:上焦(心・肺)、中焦(脾・胃・肝・胆)、下焦(小腸・大腸・腎・膀胱)

1)マスタード(Mastard・芥子/ガイシ) 味:辛 性:温 帰経:肺
日本薬局方で規定されている芥子は、アブラナ科のカラシナおよびその栽培品種の種子です。辛味は種子に含まれる配糖体シニグリンがミロシンという酵素の作用で分解されアリルイソチオシアネートを生ずることで生成します。そのため、カラシ粉は熱湯でとくと酵素が働かず辛味がなくなります。薬用としては局所刺激、発泡薬とし、または芥子を微温湯でといた芥子泥はリウマチ、神経痛などの痛みをとるために貼って使われます。または食欲増進剤として食用嗜好品とされています。インドネシアのジャワ島では駆梅薬としても使用されています。

2)ターメリック(Turmeric・鬱金/ウコン)味:辛・苦 性:涼 帰経:心・肺・肝
インド・熱帯アジア原産ショウガ科のウコンの根を乾燥したものです。カレー粉の黄色はウコン中に含まれる色素成分クルクミンによるもので、ウコン自体はスタフィロコッカス属などの菌に対し抗菌作用があり、また同時に含まれるフェルラ酸と共に胆汁分泌促進作用があるとされています。

3)クミン(Cumin・馬芹/バキン)味:辛 性:温 帰経:脾・胃
東地中海地方原産のセリ科クミンの果実で、他のセリ科植物の果実に比べて刺激性や芳香性が温和です。インドでは香味料の他に駆風薬とし、マレーシアでは胃腸薬、収斂薬として用いられています。


4) カルダモン(Cardamon・小豆蔲/ショウズク)
味:辛・甘 性:温 帰経:脾・胃・腎
南インド原産ショウガ科のカルダモンの果実で、インドにおいて古くから芳香性健胃薬として用いられていました。日本では山椒の代用として苦味チンキ、芳香チンキの原料としていますが、直接薬用とはしていません。使用時には果実を割って種子を用います。

5) クローブ(Clove・丁子/チョウジ)味:辛 性:温 帰経:肺・胃・脾・腎
香料諸島といわれるモルッカ諸島原産のフトモモ科植物の花蕾で、精油オイゲノールを含み強い芳香があります。薬用としては、消化機能促進、駆風薬として各種の家庭薬に配合され、その他、含嗽剤などの矯臭薬としても用いられています。

6) コリアンダー(Coriander・コズイシ・シャンツァイ・パクチー)
味:辛 性:温 帰経:脾・肺
地中海地方頭部原産セリ科のコエンドロの果実で。ヨーロッパでは古くから健胃、駆風薬とされ、紀元1世紀の医者ディオスコリデスは肝臓、腸、眼の病気に良いと記しています。

7) ナツメグ(Nutmeg・肉豆蔲/ニクズク)味:辛 性:温 帰経:脾・胃・大腸
チョウジの原産地モルッカ諸島の近くのバンダ諸島に原産するニクズク科ニクズクの種子で、使用するときは種皮を割ってその仁を用います。成分は精油2~9%、脂肪、芳香成分ミリスチシンなどで、芳香性健胃、矯味矯臭薬としての需要が多くなっています。

8) キャラウェイ(Caraway・カルム実・姫茴香)味: 性: 帰経:
ヨーロッパ東部~アジア西部地域原産のセリ科ヒメウイキョウの果実で、ウイキョウ(フェンネル)の代用品として健胃、駆風薬として使われ、また料理や製菓の香料とされています。

9) ベイリーフ(Bay Leaf・月桂樹葉)味:苦 性:温 帰経:脾・肺
南ヨーロッパ原産のクスノキ科ゲッケイジュの葉で、精油1~3%を含み、ヨーロッパにおいては芳香性健胃薬として内服し、リウママチ、疹癬などの塗布薬としても使われています。果実も月桂実と称し苦味健胃薬として使われています。

10) フェンネル(Fennel・小茴香/ショウウイキョウ)
味:辛 性:温 帰経:肝・腎・脾・胃
ヨーロッパ原産セリ科のウイキョウの種子で、各国の薬局方に記載されています。精油3~8%、主成分はアネトールで、その他ピネン、アニスアルデヒドなどを含み、芳香性健胃、駆風、去痰薬として粉末(1日0.5~2g)または浸剤(5~15g)で用います。

11) シナモン(Cinnamon・桂皮/ケイヒ)味:甘・辛 性:熱 帰経:肝・腎・脾
ニッケイ属(Cinnamomum)の複数の樹木の内樹皮から得られる香辛料。ニッキ(肉桂〔ニッケイ〕の音変化)とも。また、生薬として用いられるときには桂皮(ケイヒ)と呼ばれる。シンナムアルデヒド、オイゲノール、サフロールなどを含み、体を温める作用、発汗・発散作用、健胃作用があります。さらに「プロアントシアニジン」はインスリンの分泌を促進し、さらに感受性を高めてくれるという効果があるため、血糖値が下がりやすくなります。

12) スターアニス(Star anise・八角/ハッカク)味:辛・甘 性:温 帰経:肺・胃
大茴香(だいういきょう)、八角茴香(はっかくういきょう)とも呼ばれ、独特の強くて甘い香りをもち、外観は8つの突起をもつ星型をしたスパイスです。香りの主成分は「アネトール」で、これは、アニスシードやフェンネルシードの香りの主成分と共通です。 未熟な果実を乾燥させたものをスパイスとして利用します。

13) パプリカ(Bell peppers・パプリカ)味:甘・辛 性:温 帰経:肺・心・腎・脾
唐辛子の主な辛み成分のカプサイシンが劣性遺伝子のため、ピーマンやシシトウガラシと同じく果実に辛みをもたないトウガラシの栽培品種です。栄養素の構成もピーマンに似るが、ビタミン様物質の一種であるビタミンPを含んでいる。ビタミンPはビタミンCを壊れにくくし、またその抗酸化作用の性質を高める効果をもつため、加熱調理してもビタミンCが失われにくい。

14) メース(Mace・肉豆寇花/ニクズクカ)味:辛 性:温 帰経:脾・胃・大腸
ナツメッグの木から採れる果実を割って現れる仮種皮と呼ばれる美しい深紅色の網目状の膜を乾燥させたものがメースです。ナツメッグと同じ果実から採取されるスパイスで、香りは似ていますが、メースの方がより繊細でやわらかい香りがします。乾燥して粉にしたものは、ナツメッグより明るく赤みを帯びた茶色です。

15) セージ(Common Sage・ヤクヨウサルビア)味: 性: 帰経:
肉料理や魚料理など、脂っこい料理をすっきりと仕上げるのに重宝します。乳製品とも相性が良く、
また強い抗菌・抗ウイルス作用を持ったハーブです。その優れた抗菌作用から、セージティーでうがいをすると風邪や感染症の予防になり、歯肉炎や口内炎などの症状を和らげます。

16) タイム(Thyme・立麝香草/たちじゃこうそう)味: 性: 帰経:
各種煮込み料理やスープ、魚や肉の香草焼き、ムニエルなどに使われます。魚との相性の良さから「魚のハーブ」と呼ばれることも。 生の枝葉はそのまま使うのはもちろん、オイルやビネガーに漬けこんで香りを移しておくと、長くその香りを楽しめます。 また、タイムには、殺菌・防腐作用を持つ「チモール」という芳香成分が含まれることから、濃いめに煮出したハーブティーをさまして、うがいに利用するのも良いでしょう。

17) フェネグリーク(Fenugreek・胡蘆巴ころは/メッチ)
味:苦 性:温 帰経:腎
火を通すとメープルシロップのような甘い風味が出ます。
古くから中近東、アフリカ、インドで栽培され、日本には享保年間に持ち込まれました。ヨーロッパでは古くから口腔病、胃腸障害の薬草として広く利用され、漢方では補腎や、強壮、健胃に良いとされています。2011年、動物実験によってフェヌグリークが脂肪蓄積抑制や血中コレステロール低下に関与することが報告されました。

18) マンダリン(Mandarin・陳皮/ちんぴ)味:辛・苦 性:温 帰経:肺・脾
ウンシュウミカンの皮を乾燥させたスパイスで、ほのかに爽やかな柑橘系の香りがします。七味唐辛子や五香粉といったミックススパイスの配合原料でもあります。
血圧降下作用もあり、漢方では芳香性健胃、鎮咳薬として、食欲不振、嘔吐、疼痛などに対して用いられます。外皮を陰干しして乾燥させ、1年以上たった果皮が生薬として利用されます。

19)オレガノ(Oregano・花薄荷/はなはっか)
味:苦・辛 性:温 帰経:心・肺・脾
清涼感のある香りで、肉や魚などの臭み消しにも重宝されます。ローマ時代の美食家アピシウスが、「おいしいソースには欠かせないスパイス」と言って愛した香りです。
抗菌・殺菌作用や、消化器系の不調の緩和が挙げられます。 オレガノオイルは、欧米では「天然の抗生剤」といわれるほどで、呼吸器系の不調の緩和や風邪予防にも効果が期待できます。

20)ジンジャー①(Gingerr・生姜/ショウキョウ)
味:辛 性:温 帰経:肺・脾・胃
ショウガ科のショウガの根茎をそのまま乾燥または蒸して乾燥したものです。漢方では生姜と乾姜があり、前者はそのまま、後者は蒸して乾燥したものですが、漢方の医方書の生姜は古根(ヒネショウガ)を用い、乾姜は普通の乾燥品を用います。生姜は新陳代謝を促進し、水毒を去る目的で嘔吐、咳、頭痛、腸満、実証の発熱、鼻づまりなどに用い、乾姜は腹冷痛、腰痛、瀉下などに応用されています。
ショウガの成分は精油および辛味成分で、これが食欲増進、健胃、鎮嘔、鎮痛作用を示すとされています。

21)ジンジャー②(Ginger・乾姜/カンキョウ)
味:辛 性:熱 帰経:心・肺・脾・胃・腎
ショウガ科のショウガの根茎を蒸して乾燥したものです。
生姜に多く含まれ成分は「ジンゲロール」、これに熱をくわえると「ショウガオール」に変化します。
血流を促進することで血液を体の隅々に送り、体を内側から温めることができます。

22)赤唐辛子
23)青唐辛子(チリーChili Pepper・唐辛子)味:辛 性:熱 帰経:心・脾
ナス科のトウガラシおよびそれらの多くの変種、品種の果実です。トウガラシは世界各地で栽培され多くの品種が作られていて、中にはピーマンのように辛くない品種もありますが、ほとんどは辛いものでカレーの辛味の中心となっています。辛味成分はカプサイシンと呼ばれるもので、興奮、局所刺激作用があり、また駆風(腸内のガスを出すこと)、健胃の効果もあり、消化不良、胃炎、疝痛などに用いられます。またトウガラシチンキは、ヨーロッパや日本でリウマチ、神経痛、腰痛、凍傷などに塗布します。

24)ブラックペパー(Black Pepper・黒胡椒)味:辛 性:熱 帰経:胃・大腸
胡椒には黒胡椒と白胡椒がありますが、加工法の違いによるもので、共に原植物は南インド原産コショウ科のコショウです。この果実をやや未熟のうちに採って天日乾燥したものが黒胡椒であり。完熟させてから採取し、約1週間水に浸して外皮を去り、乾燥させたものが白胡椒です。胡椒の精油成分はほとんど外皮に含まれているので、白胡椒のほうが香味がおだやかでヨーロッパでは白のほうが好まれています。薬用としては健胃、消化促進薬として用いられ、マレーシアではハチミツと混ぜてリウマチや頭痛に刺激剤として外用されています。
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COVID-19 感染症に対する漢方治療

金沢大学附属病院漢方医学科臨床教授 小川 恵子先生の特別寄稿をご紹介します。
COVID-19 感染症に対する漢方治療の考え方 小川 恵子先生(金沢大学附属病院漢方医学科臨床教授)

補中益気湯
補剤の王者として別名医王湯と呼ばれ、胃腸の働きを高め、体力を補い元気をつけます。即ち、虚弱体質、食欲不振、病後の衰弱、疲労倦怠、夏負けなど体力増強を目標に本方が適用されます。

補気健脾の人参・白朮・陳皮・甘草は気の生成を強め、固表の白朮は黄耆を補佐します柴胡・升麻は陽気を昇発し、補血の当帰は、気の運行を助け、いずれも黄耆を補佐します

十全大補湯
気血、陰陽、表裏、内外、みな虚したものを大いに補うもので十全の効ありとの意味にて十全大補湯と名付けられた処方で、肉体的にも精神的にも衰弱したものに用います。即ち、大病後、産後、手術後の衰弱、食欲不振、疲労倦怠、体力低下に本方が適用されます。
補気の基本方の四君子湯である人参・白朮・茯苓・甘草と補血の基本方と補血の四物湯を組合せた処方で気血を補います。益気固表の黄耆を加えて補気生血を強め、温通の桂皮と和胃健脾の人参を加えて陽気を振奮することにより、他薬の効能を補佐します。

その他掲載漢方処方に関しては、お問い合わせください。

お屠蘇のお話

屠蘇散(とそさん)と屠蘇酒(とそしゅ)
あけましておめでとうございます。

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皆様は、お正月に「お屠蘇」を飲んで、新年のお祝いをしますか?

過日テレビで、当店の「延寿屠蘇散」のご紹介をいただきました。
2014年1月11日、テレビ大阪「おとな旅あるき旅」


2014年10月8日、BSフジ「日本遺産物語」



お正月に飲むお酒を、区別無く「お屠蘇」と呼んでいる方も少なくありません。
お屠蘇(とそ)とは、屠蘇散という漢方薬をお酒・味醂に浸けた「薬酒」で、一年間の邪気を払い、長寿を願って正月に飲みます。

そもそも「屠蘇」とは本来、「『蘇』という鬼を屠(ほふ)る(殺す)」ということだと言われています。「屠」には「死」「葬る」という意味があります。
また、「邪を屠(ほふ)り、身体を蘇らせる」という意味からこの名がついたという説もあります。
*鬼=邪疫病魔=わるいはやりやまい
*邪…風寒暑湿等の外因によって起こる疾病の病原、例えば、寒邪、湿邪
屠蘇散は、新しい年の出発に当たって、新陳代謝の滞りを清掃し、身体を清健にして、長寿をはかるという意味で処方されたものです。

屠蘇散は、一説には三国時代の名医・華佗の処方によるものといわれています。
中国の唐の時代の「外台秘要」という総合医学書には、伝わってきた正月の風習について次のように記しています。
「屠蘇酒は、疫病から人を守る。八種の生薬を刻んで紅い袋に入れ、大晦日に井戸につけておく。これによって井戸水を清らかな聖なるものにする。正月早朝、日の出と共にそれを取り出して、今度は酒で煎じる。東方に向いて一家で飲む。飲む順序は年齢の小さな子供から年長のものへ。量は自由。一人が飲めば一家が無病無疫。一家全員が飲めばその家の一里四方が無病無疫。三日たったら煎じカスを再び井戸へつける。そうすれば一年中無疫である。」
これが嵯峨天皇の時代(9世紀初め)に日本に伝わり、宮中での儀式として行われ、江戸時代には武家や一般の上流階級にも取り入れられるようになったようです。

『和漢三才図会』造酒類の「屠蘇酒〔付〕白散」には、天皇が元旦の四方拝と歯固めの供を終えた後、典薬頭が屠蘇(とそ)酒と白散を献上し、それを薬子(くすりこ。毒味をする童女)に試させて、それから奉進したとあり、この儀式が嵯峨天皇の弘仁年中(810~824)に初めておこなわれたということが書いてあります。またこの薬酒には屠蘇、白散のほか度嶂散(とちょうさん)というのがあって、飲み方にも順番があり、まず最初に一献が屠蘇、二献が白散、三献が度嶂散とされています。
和漢三才図会屠蘇

ちなみに『日本歳時記』には、白散は白朮、桔梗、細辛を各一匁配合するとあります。
度嶂散は、麻黄、山椒、白朮、桔梗、細辛、乾薑、防風、肉桂が配合されています。

平安時代の貴族は屠蘇、白散のいずれかを、室町時代では白散を、江戸時代の徳川幕府では屠蘇を用いていた様です。
この風習はやがて庶民にも広まります。 明治末頃は、年末になると薬種屋の店頭には延寿屠蘇散と書かれたビラが下がりました。

『本草綱目』酒の部に「屠蘇酒」が記載されています。
それによると
赤朮(せきじゅつ)(キク科ホソバオケラの根茎)水分代謝改善
桂心(けいしん)(クスノキ科ニッケイの樹皮)芳香性健胃、発汗、解熱、鎮痛、整腸、など
防風(ぼうふう)(セリ科ボウフウの根) 発汗・解熱作用、抗炎症作用
抜契(ばっかつ)(サルトリイバラの根茎)解毒、利尿
大黄(だいおう)(タデ科大黄の根茎)瀉下、利尿
鳥頭(うず)(キンポウゲ科トリカブト属の塊根)強心作用、鎮痛作用、末梢血管拡張赤
小豆 (せきしょうず)(マメ科アズキ、ツルアズキの成熟種子)利尿、解毒、消炎

下剤や強心剤などが含まれていて、健康薬というより、解毒薬の性格が強いようです。
現在の屠蘇はかつての処方とは異なり、だいぶ飲みやすくなっています。

現在、当店での「延寿屠蘇散」
・白朮(ビャクジュツ) キク科オケラまたはオオバナオケラの根 利尿作用、健胃作用、鎮静作用
・山椒(サンショウ) サンショウの実 健胃作用、抗菌作用
・桔梗(キキョウ) キキョウの根 鎮咳去啖作用、鎮静・沈痛作用
・肉桂(ニッケイ) ニッケイの樹皮、シナモン 健胃作用、発汗・解熱作用、鎮静・鎮痙作用
・防風(ボウフウ) セリ科ボウフウの根 発汗・解熱作用、抗炎症作用
・陳皮(チンピ) ミカン科ウンシュウミカン果皮 抗炎症・抗アレルギー作用、健胃作用、鎮痙作用

これら生薬成分の効能から考えると、屠蘇散は胃腸の働きをととのえ、のどや気管支を保護する作用が考えられます。
昔からの風習というだけでなく、現在でも、風邪を予防する効果などが期待できる飲み物といえます。
お正月だけに限らず、また薬用酒としてだけではなく、熱湯で振りだして漢方茶(ハーブティー)として続けても効果は期待できます。自分専用の配合の「屠蘇散」を作ってみても楽しいですね。

屠蘇酒の作り方
延寿屠蘇散1包を和紙の袋のまま、清酒180ml~360ml(一合~二合)に浸して、一晩そのままおき、翌日にお使いください。
お好みに応じて味醂(みりん)を入れると、甘口の飲みやすい屠蘇酒になります。

漢方茶(ハーブティー)としても味わえます。
ティーポットかサーバーに、延寿屠蘇散1包を和紙の袋のまま入れ、熱湯500ml(2カップ半)を注ぎます。
3分ほど蒸らすと、美味しい屠蘇茶として味わえます。

日本酒以外のお酒でもお楽しみいただけます。
◆白ワイン:日本酒と同様、冷たい白ワインに一晩浸します。
◆赤ワイン:ボディのしっかりした赤ワインは、屠蘇散を入れて温め、蜂蜜や角砂糖で甘味を付けると、美味しいホットワインをお楽しみいただけます。
◆ウィスキー・ブランデーはお湯割りのお湯にあらかじめ屠蘇散を浸し、引き上げた後にお酒を注ぐと、香りよく楽しめます。

延寿屠蘇散

正倉院宝物の漢方薬

奈良国立博物館では、『御即位記念第71回正倉院展』が始まりました。
正倉院宝物は、日本における漢方薬の歴史にも大きく影響しています。
正倉院には、約9000点もの聖武天皇の遺愛品、東大寺の寺宝や文書など、7~8世紀の優れた東洋文化を伝える宝物が、納められています。
天平勝宝8年(756年)、聖武天皇の七七忌(四十九日)に、光明皇后は、天皇遺愛の品々(調度品・楽器・遊戯具・武具・装身具など)を東大寺の盧舎那仏(大仏)に献納しましたが、天皇の遺愛品とは別に薬物も納めました。
「東大寺献物帳」のなかの一巻に、献納した60種類の薬物名と、その数量および質量などが列記されています。「盧舎那仏に奉る種々薬」と題されていて「種々薬帳」と呼ばれています。 
巻末には、「病に苦しんでいる人のために必要に応じて薬物を用い、服せば万病ことごとく除かれ、千苦すべてが救われ、夭折(ようせつ)することがないように願う」といった願文が記載されています。実際に、願いどおり薬物は持ち出されて病人を救うために役立てられたようです。
 皇后は人々への慈愛心が強く、貧しい病人に施薬や施療をするための施薬院(せやくいん)や、貧窮者や病人、孤児などを救うための悲田院(ひでんいん)を創設しました。仏教に深く帰依し、東大寺大仏造立を成し遂げた天皇が大仏開眼からわずか4年で崩御されたため、皇后はたいそうお悲しみになりました。
もともと、体が丈夫でなかった天皇を心配してさまざまな薬物を揃えていました。植物をはじめ珍しい動物や鉱物などを、唐や新羅、東南アジアなどからも取り寄せていたことをうかがい知ることができます。
 「種々薬帳」に記載されている60種類のうち、約40種類が正倉院に現存し、約1250年前の薬物として、他に例をみない貴重な資料とされています。

当店では、普段より、正倉院に宝物として伝わる薬物のうち、現在でも漢方薬原料として使われる生薬を、展示しています。
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『種々薬帳』
種々薬帳01

種々薬帳02_s

盧舎那仏に奉る種々薬

第一櫃
 1 麝香(ジャコウジカの雄の香のう分泌物)
 2 犀角(サイカク・インド産クロサイの角)
 3 犀角(サイカク・インド産クロサイの角・犀角の記載2つあり)
 4 犀角器(サイカクキ・犀角でつくった盃)
 5 朴消(ボウショウ・含水硫酸ナトリウム)
 6 ずい核(ズイカク・バラ科の成熟した果実の種子)
 7 小草(ショウソウ・中国産の遠志をいうが現存品はマメ科植物の莢果)
 8 畢撥(ヒハツ・インド産ナガコショウ)
 9 胡椒(コショウ・インド産コショウ)
10 寒水石(カンスイセキ・方解石(炭酸カルシウムの結晶))
11 阿麻勒(アマロク・亡失したがコショウ科アムラタマゴノキの果実と考えられている)
12 菴麻羅(アンマラ・トウダイグサ科アンマロクウカンの果実片、種子)
13 黒黄連(コクオウレン・現存)
14 元青(ゲンセイ・亡失のため不明)
15 青しょう草(セイショウソウ・亡失)
16 白及(ハクキュウ・ラン科シランの球根)
17 理石(リセキ・繊維状石膏・含水硫酸カルシュウム)
18 禹余粮(ウヨリョウ)
19 大一禹余粮(ダイイチウヨリョウ)
20 竜骨(リュウコツ・哺乳動物の骨の化石)
21 五色竜骨(ゴシキリュウコツ・化石生薬・亡失)
22 白竜骨(ハクリュウコツ・化石鹿の四肢骨)
23 竜角(リュウカク・化石鹿の角)
24 五色竜歯(ゴシキリュウシ・ナウマン象の第三臼歯)
25 似竜骨石(ニリュウコツセキ・化石生薬 化石木)
26 雷丸(ライガン・サルノコシカケ科ライガン菌)
27 鬼臼(キキュウ・ユリ科マルバタマノカンザシの根茎・現在はメギ科ハスノハグサ)
28 青石脂(セイセキシ)
29 紫鉱(シコウ)
30 赤石脂(シャクセキシ)
第二櫃
31 鍾乳床(ショウニュウショウ)
32 檳榔子(ビンロウジ・ヤシ科ビンロウの種子)
33 宍(肉)縦容(ニクジュヨウ・ハマウツボ科ホンオニク)
34 巴豆(ハズ・トウダイグサ科の種子)
35 無(没)食子(ムショクシ)
36 厚朴(コウボク・現在はモクレン科ホウノキ属だが現存品は別物のようである)
37 遠志(オンジ・ヒメハギ科イトヒメハギの根)
38 呵(訶)梨勒(カリロク・カラカシ・シクンシ科ミロバランノキの果実)
第三~五櫃
39 桂心(ケイシン・クスノキ科ニッケイの樹皮)
第六~八櫃
40 芫花(ゲンカ・フジモドキの花蕾)
第九~十一櫃
41 人参(ニンジン・ウコギ科コウライニンジンの根)
第十二~十四櫃
42 大黄(ダイオウ・タデ科ダイオウの根茎)
第十五・十六櫃
43 臈蜜(ミツロウ・トウヨウミツバチの蜜蝋)
第十七~十九櫃
44 甘草(カンゾウ・マメ科カンゾウの根)
第二十櫃
45 芒消(ボウショウ・含水硫酸マグネシウム)
46 蔗糖(ショトウ・イネ科サトウキビの茎から得られる、いわゆる砂糖)
47 紫雪(シセツ・鉱物八種の配合剤)
48 胡同律(コドウリツ・樹脂の乾燥物)
49 石塩(セキエン・塩化ナトリウム)
50 い皮(イヒ・ハリネズミの皮)
51 新羅羊脂(シラギヨウシ)
52 防葵(ボウキ・現在はツヅラフジ科シマサスノハカズラだが亡失のため不明)
53 雲母粉(ウンモフン)
54 蜜だ(陀)僧(ミツダソウ)
55 戎塩(ジュエン)
56 金石陵(キンセキリョウ)
57 石水氷(セキスイヒョウ)
58 内薬(ナイヤク・亡失して不明)
第二十一櫃
59 狼毒(ロウドク・亡失して不明だが、サトイモ科クワズイモの根茎、トウダイグサ科マルミノウルシの根、ジンチョウゲ科の根など考えられて)いる
60 冶葛(ヤカツ・断腸草あるいは胡蔓藤のクマウツギ科)

署名の前、光明皇后による文章

「以上は堂内に安置し、盧舎那仏に供養す。若し病苦に縁りて用うべきもの
あらば、並びに僧綱に知らせて後、充て用うることを聴さん。伏して願わく
は、この薬を服する者、万病悉く除かれ、千苦皆救われ、諸善成就し、諸悪
断却し、業道に非ざるよりは長じて夭折するなく遂に命終の後、(蓮)花蔵世
界に往生し、盧舎那仏に面し奉らしめ、必ず遍法界位を証得せんと欲する」
柴田承二氏論文『正倉院薬物とその科学的調査』より
光明皇后は、これらの薬を、誰でもが使えて、そしてこのお薬を使った人が
皆快癒し幸せな人生を送り、死後も極楽へ行けるように願っています。
種々薬帳全面に、天皇の御璽(ぎょじ)が押されています。

天平勝宝八歳六月二一日

署名

藤原朝臣仲麻呂従二位行兼紫薇令中衛大将近江守
藤原朝臣永手従三位左京大夫兼侍従大倭守
巨満朝臣福信従四位上行紫薇少弼兼中衛少将山背守
賀茂朝臣角足紫微大忠正五位下兼行左兵衛率左右馬監
葛木連戸主行紫微少忠

土用の丑の日

二十四節気「大暑」まであと三日ですが、今年はすでに梅雨明けから夏本番がやってきています。
路面近くの手元の温度計が40℃を超える日が続いています。

さて、今日7月20日は、土用の丑の日で、スーパーやお惣菜屋さんには、鰻の蒲焼きが並んでいることでしょう。

「土用の丑の日」についてお話ししてみます。

まず「土用」とは

万物を木・火・土・金・水・に当てはめる五行思想では、春は木、夏は火、秋は金、冬は水が割り当てられています。
残る土は、各季節の変わり目に割り当てられ、立春・立夏・立秋・立冬の直前約18日を「土用」といいます。
五行相関図の下の表に五季として表示しています。

4五行相関図2018

今年2018年は、
冬の土用 1月17日(水)~2月3日(土)
春の土用 4月17日(火)~5月4日(金)
夏の土用 7月20日(土)~8月6日(月)
秋の土用 10月20日(土)~11月6日(火)

二十四節気2018_01

この期間中に巡ってくる「丑」の日が、「土用の丑の日」ということになります。
一般的には、「夏の土用の丑の日」と思われがちですね。

そして「丑の日」とは

日本では年ごとの十二支が決まっているのは、皆さんご存じですが、日にも十二支があります。
子ね・丑うし・寅とら・卯う・辰たつ・巳み・午うま・未ひつじ・申さる・酉とり・戌いぬ・亥いが順番に割り当てられ12日間で一区切りが繰り返されます。

土用の期間が約18日間ですので、1回ないしは2回丑の日がやってきます。

2018年の土用の丑の日を見てみましょう。

冬の土用1月21日、2月2日、
春の土用4月27日、
夏の土用7月20日、8月1日、
秋の土用10月24日、11月5日

今年の夏は、土用の丑の日が2回巡ってきます。
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